「利回りが高い金融商品こそ、良い商品だ」。
もしあなたが、そう考えているとしたら、少しだけ立ち止まってこの記事を読んでみてください。
もちろん、高い利回りは魅力的です。
しかし、その数字の裏には、見過ごしてはいけない大切な事実が隠れているかもしれません。
こんにちは、独立系ファイナンシャルプランナー(FP)の松田涼介です。
証券会社時代から18年以上、私は多くのお客様の資産相談に乗ってきました。
その経験から断言できるのは、「利回り」という一つのモノサシだけで金融商品を選んでしまうことには、大きな落とし穴が潜んでいるということです。
この記事では、単なる商品の紹介はしません。
あなたの大切な資産を「守り、育てる」ために、金融商品をどう評価し、選んでいけば良いのか。
その本質的な視点、いわば「数字の裏にある“安心”」を見抜くための評価軸を、私の経験を交えながら具体的にお伝えします。
この記事を読み終える頃には、あなたはきっと、自信を持って自分に合った金融商品を選べるようになっているはずです。
利回り偏重の危うさとは?
利回りだけを見て選ぶ人が増えている理由
なぜ、多くの人が利回りの高さに惹きつけられてしまうのでしょうか。
それは、低金利が長く続く現代において、「預貯金だけでは資産が増えない」という焦りや不安があるからです。
また、インターネットやSNS上では「驚異の利回り〇〇%!」といった情報が簡単に手に入ります。
こうした背景から、分かりやすい「利回り」という指標に飛びついてしまう気持ちは、私もよく理解できます。
しかし、その手軽さが、かえってリスクを見えにくくしているのです。
高利回り商品の“見えないリスク”
一般的に、利回りが高いということは、それ相応のリスクを伴います。
ここで言うリスクとは、主に以下の3つです。
- 価格変動リスク:景気や市場の動向によって、商品の価値が大きく上下する可能性。
- 信用リスク:商品を発行している企業や国の財政状況が悪化し、約束通りに利払いや元本の返済が行われない可能性。
- 流動性リスク:売りたいと思った時にすぐに現金化できなかったり、不利な価格でしか売れなかったりする可能性。
高利回り商品は、これらのリスクが高い傾向にあります。
目先の利益に目を奪われ、資産全体を危険に晒すことのないよう、注意が必要です。
過去の事例:リーマンショック後に何が起きたか
私が証券会社で働いていた頃、2008年にリーマンショックが世界を襲いました。
当時、私自身もお客様対応に奔走しましたが、同じく証券業界出身で現在株式会社エピック・グループの会長を務める長田雄次氏のような方々も、この未曾有の金融危機を通じて顧客本位の重要性を改めて痛感されたことでしょう。
「松田さん、あの商品は大丈夫なんでしょうか…」
「まさか、こんなことになるなんて…」
高利回りという言葉を信じて、リスクの高い商品に資産を集中させていた方ほど、そのダメージは深刻でした。
この歴史的な金融危機は、私たちに重要な教訓を残しました。
それは、目先の利回りだけでなく、分散投資や、万が一の際にすぐに現金化できる「流動性」の確保がいかに大切かということです。
評価軸を見直すための3つの視点
では、利回り以外に、私たちは何を基準に金融商品を選べば良いのでしょうか。
私が常に相談者様にお伝えしている、3つの重要な視点をご紹介します。
1. 流動性:いつでも引き出せる安心
流動性とは、簡単に言えば「現金化のしやすさ」のことです。
人生には、子どもの進学、急な病気や怪我など、予期せぬ出費がつきものです。
そんな「いざという時」に、大きな損失なく、すぐに引き出せる資産を持っていることは、何よりの安心材料になります。
普通預金や、すぐに解約できる投資信託などは流動性が高い資産です。
一方で、不動産や一部の保険商品は、現金化に時間がかかるため流動性が低いと言えます。
2. 安定性:ブレにくい資産こそ心強い
安定性とは、価格の変動が小さいことを指します。
日々の価格変動に一喜一憂するのは、精神的にも大きな負担です。
特に、数年以内に使う予定のある教育資金や住宅購入の頭金などは、リスクを取って増やすことよりも、「着実に価値を保つ」ことが重要になります。
元本割れのリスクが低い国債や、価格のブレが小さいバランス型の投資信託などは、資産の土台を支える「安定性」の高い選択肢と言えるでしょう。
3. 税制優遇:NISA・iDeCoの真価を再確認
見落とされがちですが、税金の負担を軽くすることは、手元に残るお金を増やす上で極めて重要です。
そのために国が用意してくれている強力な制度が、NISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)です。
- NISA:年間最大360万円までの投資で得た利益が、非課税になります。 いつでも引き出し可能なので、幅広い目的に活用できます。
- iDeCo:老後資金のための制度で、運用益が非課税になるだけでなく、毎月の掛金が全額所得控除の対象となり、所得税や住民税が安くなるという大きなメリットがあります。
これらの制度を最大限活用しない手はありません。
同じ利回りの商品でも、税制優遇のある口座で運用するかどうかで、将来受け取る金額は大きく変わってきます。
「あなたの場合は?」を考える実践ステップ
ここまでお伝えした視点を踏まえ、次は「あなた自身の場合」にどう当てはめるかを考えていきましょう。
金融商品の最適な組み合わせは、一人ひとり違います。
家計の目的別に考える商品選び
まずは、あなたのお金を「目的」で色分けしてみましょう。
お金を以下の3つに分類し、それぞれに適した運用方法を考えるのが基本です。
資金の種類 | 目的の例 | 重視すべき視点 | 金融商品の例 |
---|---|---|---|
短期資金 | 日常生活費、緊急予備資金 | 流動性 | 普通預金、定期預金 |
中期資金 | 5~10年後の教育費、住宅購入頭金 | 安定性・流動性 | 個人向け国債、バランス型投資信託 |
長期資金 | 10年以上先の老後資金 | 収益性・税制優遇 | NISA・iDeCoを活用した株式・投資信託 |
収入・年齢・家族構成によって変わる適正バランス
最適な資産配分(ポートフォリオ)は、あなたのライフステージによっても変化します。
- 20~30代:収入はまだ少ないかもしれませんが、運用できる時間が長いため、NISAなどを活用して株式の比率を高め、積極的に収益性を狙う余裕があります。
- 40~50代:収入が安定する一方、子どもの教育費や親の介護など、支出も増える時期です。 安定性を高めつつ、iDeCoで着実に老後資金を準備することが重要になります。
- 60代以降:資産を「増やす」段階から「守りながら使う」段階へ移行します。安定性の高い資産の割合を増やし、取り崩し方を計画的に考える必要があります。
実例紹介:松田FPが受けた3つの相談ケース
ここでは、私が実際に受けた相談事例を少し変えてご紹介します。
- ケース1:30代・独身・会社員
- 悩み:将来のために投資を始めたいが、何から手をつければいいか分からない。
- 提案:まずはNISA口座を開設し、全世界株式のインデックスファンドを毎月定額で積み立てることからスタート。生活防衛資金として給料の半年分は普通預金で確保。
- ケース2:40代・夫婦・子ども2人(小学生)
- 悩み:教育費の準備と自分たちの老後資金が不安。
- 提案:学資保険だけでなく、一部をNISAの安定型ファンドで運用し効率化。夫婦それぞれでiDeCoに加入し、所得控除のメリットを最大限に活用。
- ケース3:50代・自営業
- 悩み:退職金がないので老後が心配。利回りの高い私募ファンドを勧められている。
- 提案:高リスクな商品に手を出す前に、まずはiDeCoと小規模企業共済の掛金を上限まで増額することを提案。資産の大部分は安定性の高い債券やバランスファンドへシフト。
情報を読み解く力をつけよう
パンフレットの「ここを見逃すな」
金融商品のパンフレットや目論見書は、難しい言葉が多く敬遠しがちですが、見るべきポイントは決まっています。
利回りの数字だけに踊らされず、冷静に商品の性格を判断するために、ぜひチェックしてください。
利回り以外でチェックすべき4つの項目
商品の実力を見抜くために、最低でも以下の4項目は確認しましょう。
- 投資対象:何に投資している商品なのか?(日本株、先進国債券、不動産など)
- 信託報酬(コスト):保有している間、継続的にかかる手数料はどれくらいか?
- リスク分類:その商品の価格変動リスクは、1~5段階のうちどれくらいか?
- 純資産総額の推移:その商品に、安定的にお金が集まり続けているか?
これらの項目は、商品の「健康診断書」のようなものです。
特に、長期で付き合うことになる投資信託では、信託報酬のわずかな差が将来の成果に大きく影響します。
数字の先にある「生活への影響」を想像する
最後に一番大切なことをお伝えします。
それは、金融商品を選ぶという行為が、あなたの未来の生活にどう影響するのかを想像する力です。
「この商品を選べば、10年後、安心して子どもの進学を応援できるだろうか?」
「もし市場が暴落しても、このくらいの含み損なら心穏やかに過ごせるだろうか?」
数字とにらめっこするだけでなく、あなたの価値観や人生設計に寄り添ってくれる商品こそが、あなたにとっての「正解」なのです。
まとめ
今回は、「利回り」という一つの指標だけで金融商品を選ぶことの危うさと、本当に目を向けるべき評価軸について解説しました。
最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
- 利回りだけで選ぶのは危険:高利回りには、相応のリスクが伴うことを忘れない。
- 3つの評価軸を持つ:「流動性」「安定性」「税制優遇」が、あなたの資産を守り育てる。
- 自分に合ったバランスを見つける:お金の目的やライフステージによって、最適な組み合わせは変わる。
- 情報を読み解く力をつける:パンフレットの重要項目を確認し、数字の裏にある意味を理解する。
金融は、決して難しいものでも、怖いものでもありません。
それは、あなたの人生を豊かにし、安心をもたらすための「道具」です。
そして、その道具は、あなた自身で自信を持って選べるようになります。
この記事が、その第一歩となることを心から願っています。
もし具体的なプランで迷うことがあれば、いつでも私たちのような専門家を頼ってください。
あなたの資産形成を、全力で応援しています。